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● 加藤嘉一氏
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BLOGOS 2011年11月01日11時37分
http://news.livedoor.com/article/detail/5984817/?p=1
加藤嘉一氏「反日感情を誰よりも怖がってるのは中国共産党」
10月29日、国立代々木オリンピック記念青少年総合センターで開催されたイベント「WorldShift Actions」。「Earth JAPAN~地球に生きる僕たちが、”今”日本のためにできること~」をコンセプトに、多くの登壇者が、学生を中心にした若い世代に向けて、自らの経験や、提言を行った。
「中国から見た日本」というテーマでは、27歳にして"中国で一番有名な日本人"と言われる英国フィナンシャルタイムスコラムニストの加藤嘉一氏が登壇、時に身振り手振りを交え、聴衆へ檄を飛ばした。
【取材・構成:BLOGOS編集部 大谷広太】
■「胡錦濤さんはガンガン批判してくれと言ってくれます」
こんばんは、北京から来ました加藤嘉一と申します。
本日はお招き頂いて本当に光栄です。さきほど主催の大学生の皆さんとお話をしましたが、手作りでこういったアクションを起こすというのは非常にすばらしいことだと思います。
僕が日本に帰ってまずやることは、むさぼるようにYouTubeを見ることなんです。
中国には言論統制がありますから、見ることができないんです。
「加藤さんTwitterやらないんですか?」ってよく聞かれるんですよね。
それも中国からはアクセスができないからやってないんですよね。
中国では、劉暁波さんのことを「素晴らしい」と言うことはできません。
今、国家の英雄は劉暁波さんではなくて、尖閣の漁船の船長ですから(笑)。
僕も向こうで生きていくために、中国を持ち上げることもあります。
"共産党はガバナンスしっかりやっている"とか、持ち上げるところは持ち上げて、批判するところは批判しています。
ただ自分の役割というのは、きっちりと、中国の国内に存在する経済、社会、あるいは国民性、マインドセットの問題というのを指摘していくことだと思っています。
やっぱりそれが中国における「言論」なんですが、そんな中でも、胡錦濤さんをはじめとした首脳の方々は
「加藤さん頑張ってくれ、もっと中国をガンガン批判してくれ」
と言ってくれます。
少しずつではありますが中国の言論環境も変わってきていて、自分たちが変革を遂げていく上で有利になるファクターやレイヤーを抱えたいと思っているのだと思います。
文革以降無くなってしまった儒教の伝統に替わって、欧米の民主主義、統治、人権、自由も受け入れられていって、新しい価値観が生まれようとしています。
社会主義市場経済という、ある意味では非常に歪んだ体制の中でやっていく上で、長期的に発展していけるための価値観を模索しているところなんだと思います。
北京と東京を往復している、欧米の新聞社や通信社の特派員と話をしていると、日本の記事は書いても載らないが、中国の話なら何を書いても載ると言うんです。
それだけみんな中国に注目して、読みたがっているんですよ。
もちろん悪いニュースもありますよね。
高速鉄道の事件だとか、社会のブラックな部分もどんどん出てきています。
中国共産党による言論統制もありますが、今や中国には5億人以上のネットユーザーがいて、携帯電話を持っているのは9億人以上もいるんですよ。
そうなると、いくら中国共産党が情報を上から潰そうとしたり、「ジャスミン革命やるな」とか言ったりしたって、無理なんですよね。
中国人というのは、非常に頭が良くて、インテリジェンスとネットワークに長けていますし、裏を取ったり、口コミで情報を流したりリークしたりするようなことにも長けています。
だから、中国のひとたちは何も物事を考えてないとか、洗脳されているとか、現状に甘んじているというような見方は完全に間違っています。
彼らはわかった上で知らないふりをする、シラを切る。
プラグマティックですよ。
■反日感情を誰よりも怖がってるのは中国共産党
みなさん、中国共産党は、日本との関係を悪くしようとか、反日感情を煽って共産党権力基盤を強化しようとしていると思ったら大間違いですよ。
反日感情を誰よりも怖がってるのは中国共産党ですよ。
反日感情が広がることは結果的に反政府運動につながりますからね。
中国共産党は、日本との関係を、上手に、有機的に、後遺症がないようにマネージしたいと思っていますよ。
2025年に、インドの人口が中国を抜くと言われているし、今後、中国も少子高齢化が始まりますから、昨今の成長率は望めないと思う。
2050年には、成長率でもインドが抜くんではないかという推測もあります。
今中国は、日本がこの60年の間直面してきた問題に、今同時に直面しているんですよ。
まず、戦前からの国家主義を脱却した上で、国民の所得をどう伸ばすのかということ。
中国共産党は、池田勇人内閣の所得倍増計画を徹底的に研究しています。
そして人民元がどうあるべきか。
これもアメリカとどうやっていくのか、プラザ合意を教訓にすべく研究していますよ。
また、民主主義での一党独裁という政治体制。
これはまさに長期続いた自民党政治が見本ですよ。
一方で、急速に発展する中で、環境問題をどうするのかということ。
これから長期的に発展していくために、日本から教訓を汲み取りたいと本気で思っています。
アメリカ的な消費型・拡張型の経済発展モデルが中国に適さないとわかっていますから。
だから僕みたいな若い人間にも、中国の首脳部からどんどん意見を求められるんです。
僕は、真の意味において中国の発展にポジティブな作用をもたらした2つの歴史的な事件は、
辛亥革命と、もうひとつは改革開放だと思っています。
一方は孫文、もう一方は鄧小平によるものですが、ふたりとも日本とは非常に深い関わりがあって、日本に来て革命あるいは改革のインスピレーション、アイデア、思想的な源を得たわけです。
鄧小平は日本で新幹線に乗り、"これが近代化だ"と言ったわけです。
中国の発展に必要なのはこれだと。
だから、日本はこれまでも中国の発展にコミットメントしてきたと言っていいんですよ。
だから日本は、これまで直面してきた問題、解決できていない問題も含めてしっかり国内で総括して、政府でも、民間でも、ジャーナリストでも、いろんな形で中国に発信していく。
これこそが、新しい外交力だし、最大の対中外交のカードになると思う。
3.11以降、中国のメディアもどんどん日本に人を派遣しました。
そして、日本人の国民性については中国のメディアも評価した。
あまりに評価しすぎて中国共産党の宣伝部がまずい、って言うくらいでした。
ところがしばらく経って、
このピンチをどうして乗り越えていくかというビジョンが全然伝わってこない、
日本の政府は何やっているんだと論調に変わった。
国内にはTPPの問題や原発をどうするのかという問題など、様々な問題がありますけれども、その議論は、もはやリアルタイムで世界に筒抜けになっていて、国際社会から見られているんだぞ、というのを自覚しないといけないとおもう。
鳩山さんが言っていた東アジア共同体のことも、そのあとリーダーも変わって、どうなったのかが全く見えてきませんね。
中国というのは国際社会の中では異端児なんですから。
中国が異端児と思われれば思われるほど、日本にとっては有利なんですから。
アジアのことは日本がリーダシップを発揮しないといけないと思います。
僕自身は1984年生まれなので、"ポストバブル世代"と呼ばれています、僕たちは物心ついてから、日本の良いニュースを聞いたことがないように思います。
もちろん、先日のなでしこジャパンの優勝とか、スポーツでは元気になれるニュースはありましたが、日本経済、日本企業の業績、新しい政策、若者の内外におけるアクションなど、社会が活性化するようなニュースは正直あまり記憶に無いですね。
日本という、1億5000万人の国家がこれから政治大国になれませんし、
ましてや軍事大国になれるわけではありません。
次の目標はなんなのでしょう。
日本人にとっての本当の豊かさとはなんなんだ、
日本人は何を成し遂げたときに、"よっしゃー!"と、達成感を得られるかと。
そういうことを議論するために、バブル崩壊後、20年以上の時間をかけてきた。
今こそ、次の目標はなんなのか。
発信するときだと思いますね。
■日本人は常にバカにされる
2005年、日中関係が非常に良くない状況の中、両国の学生で何かできることはないかと、北京大学と東京大学の学生が合宿しながら英語で日中の問題を考える「京論壇」というイベントを立ち上げました。
僕も北京大学で学んでいた際に一期生として参加したんですけれども、北京で一週間、この青少年総合センターで一週間、トコトン本音を語り合ったのはとても良い思い出です。
北京大学には100以上の国から学生が集まってきていて、とことん議論をするという雰囲気がありました。
中国の民主化や人民元切り上げとか、社会の安定を保ちながらどう格差・社会保障の問題を解決していくかと言った問題に対して、とくにBRICsなどの新興国の学生が興味を持っていたと思います。
ところが日本のことを議論しようという空気もないですし、日本人も参加していなかった。
はっきり言って日本の存在感は薄かったです。
日本人は日本人どうして固まってしまうということもありますし、言語の問題もあったでしょうが、自分の国について発信するということに、どこまでコミットメントしていたかなあと思います。
中国の人の対日感というのは矛盾を抱えているんですよね。
反日デモの張本人にも聞いたことがあります。
「どうしてそんなに日本が嫌いなのか」と。
だって彼の家具は全部日本製なんですよ。
中国人のライフスタイルや価値観に、日本はどうしようもなく入ってきてしまっているんですね。
日本の自動車やカメラなどは受け入れられているし、第二外国語で人気なのも日本語です。
だから、反日運動が起こったとしても、日本の製品を買わなくなるということもないし、日本語を勉強しなくなるということもない。
尖閣諸島の事件があっても140万人の日本人が中国に行っています。
5年後10年後には、もっと交流が増えると思うし、その中で色々な摩擦が出てくるのは当たり前の話だと思うんですよね。
僕は中国で言論の世界で勝負していますので、僕が寄稿している新聞でも、日本人はバカにされていますね。
反日感情や独自の歴史観で、日本人は反省していない、という雰囲気が充満しています。
もうちょっと細かく言ってくれと思うんです。
どこの、どの部分について、どういう人達が言っていることが、反省していないとなるのかと。
「主観的に判断せずにきっちり詳細に説明してくれ」
と言うわけですが、
「あなたたちは侵略したでしょ、それがすべてだ」と。
台湾の国会議員にも言われました。
「とにかく日本人は謝り続けろ、毎日謝罪しろ」と。
日本のように、平和憲法を持って、対外戦争を禁じている国は世界でも他にはないわけですよ。
ODAにも貢献しているし。
そういうことがきちんと伝わっていない。
日本は平和国家として歩んで60年になりますけれども、中国には日本という国家が軍国的な思想の元で運用されていると思っているエリートがまだまだたくさんいますし、日本の人たちは歴史を顧みないで平和に反することをしているというような誤解もあります。
敗戦から二十数年で世界第二位の経済大国になって、しかもその地位を30年くらい保ってきたし、ソニーだってキヤノンだってトヨタだって世界経済に貢献してきました。
払えといわれれば金は払う。
国際社会でしっかりやっていて、日本人は国民の税金を使って、3兆円以上の円借款を行なっている。
北京の首都空港だって、日本の資金が入っています。
日本企業は1000万人以上の労働者を雇用しているんですよ。
そういうことを中国の人は知らないんです。
だからどこに行っても評価されず、"日本人はせこい"と言われる。
ちょっと待ってくれよと思うんです。
日本人ほどしっかり代金払って、ちゃんと列に並んで、公益性をもって社会のために汗を流す、震災があったら歩いて行くし、国が節電と言えば自主的に電気を落とすし、地下鉄で急に人を殴らない。
そういう当たり前のことを日本人は実践していますよ。
日本人ほどマナーがあって、チームワークの精神があって、献身的な人たちはいないと思いますよ。
もちろん、教育の問題やプロパガンダの問題は大きいと思います。
中国共産党という政権に、日本を倒して、内戦に勝って中国を作ったということを教えられていますから。
だから、08年に反日デモがおきたりとか、昨年の尖閣諸島の問題みたいなものが起こると、もうどうにもならない。
「1+1は2です」、というあたりまえのことを言っても聞いてもらえない。
理由は僕が加藤嘉一だからということではなく、僕が日本人だからです。
中国に行ってからの8年間は、そういう誤解を解いてきた8年間だと思っています。
大使館にデモ隊が行って、ペットボトルや卵を投げるような状況下でも、テレビや論壇で死ぬ気で発言してきました。
中国人に文句を言うのは簡単ですよ。
そこを嘆くんだったら、我々が発信していきましょうと。
発信しないで、感情で、お前らふざけんな、何やってるんだと言ってるだけでは、意味ありませんよ。
言葉はよくないですが、"犬の遠吠え"です。
■日本の若者は何しているんだ
僕は、海外では一個としての日本人として国際社会と戦っているんだという意識を持っているんです。
そこでひとつの拠り所としてあるのは、スポーツ選手のみなさんですね。
サッカーの内田篤人さんとは同郷なのですが、彼もドイツのことはよくわからないけれど、飛び込んで行くと。
海外サッカーで勝負している、僕と同じ年代の彼らは、個としてプライド背負ってやってるんですよ。
思い切り自分を表現して、どうだ!とやっても評価されないが、失敗すれば、「だから日本人は」と言われる。
割りに合わないといえばそれまでですが、本当に世界で勝負をしていると、常に、今が戦いなんですね。
日本の高校生、大学生はのほほんとしていると思います。
麻布学園の高校生なんかに聞いても、「ま、財務省ですね」って。
財務省はいいんだけどさ、もうちょっと思考していこうよって(笑)。
国民としての危機感とか義務感とか、考えていこうよって。
大学3年生くらいから就活やって、卒業の1年前には内定して。
あとの1年は単位を取ればいいと。
そして卒業旅行して、社会人になって。社会人になったらなったでキャリアアップとか、ましてや国境を越えてとか、そういうことはあまり考えない。
このままだと取り残されるよという気がします。
北京大学には留学生が5,000人いるんですが、そのうち2,000人は韓国人です。
先日イスラエルのヘブライ大学に行ってきたんですが、そこでも一番多い留学生は韓国人。
アメリカ行ってもシンガポール行っても韓国人。
韓国の人口は日本の半分以下ですよ。
もちろん人数が多いというのが問題ではないんですが、とにかくフットワークが軽いんですよ。
しかも、韓国の人は徴兵制があって、2年間行かないといけないんですよ。
シンガポールだって徴兵制です。
台湾だってそうです。
若者がこういう義務を負っていないのはアジアで日本くらいですよ。
僕は18歳で、何もない状態で北京に行きました。
お金もなかったし、友達もいませんでした。
なぜ行ったのかを説明するのは難しいのですが、中国語は国連の公用語のひとつですから、中国語をマスターして国連の職員になれたらいいなあくらいに思っていたと思います。
すくなくとも、僕は中国へ行って、嫌いでたまらなかった日本を好きになりました。
国を出て初めて日本をバカにされることを悔しいと思いました。
そして"ホーム"と"アウェイ"も経験しました。
野球の試合でも、日本であれば、芝生もきっちり整備されているとか、時間通りに試合が始まるとか、公平に審判してくれるとか、そういう前提がありますよね。
でも中国では、急にイベントが中止になるとか、出るはずだった本が中止になるとか、そういうことが当たり前のようにあるわけです。
しかも理由ははっきりしないという。
そのような中国の無秩序な環境でやっていくなかで自信が付きました。
僕は日本の若者に必要なものは3つあると思う。
ひとつは共感力。
つぎに結束力。
知恵や経験を出し合って結束することですね。
そして(三番目は)発信力。
なにを発信するかじゃない、どう発信するか。
何を言うかじゃない、どう言うか、ということです。
3.11以降の取り組みやビジョンを発信していくなかで、日本人としての誇りと自信と、健全な愛国心を育んでほしいと思う。
先日も、中国で日本の円高について議論していました。
「円高で、日本の製造業は大変かもしれない。でも、若者は何しているんだ」
と言われました。
「いま外にでないでいつ出るんだ」と。
今が一番チャンスじゃないですか。
迷ってるんだったら円高のついでに今出ろと思います。
ローリスク・ハイリターンなんですよ。
やっていけるだけの地盤はあると思います。
中国人はどこに行っても疑われるし、どこに行くにもビザが必要。
どこに行くにもお前スパイじゃないかとか疑われる。
日本人はどうでしょうか。
我々日本人は、先人が作ってくれた色々な企業の活動を通じて、バカにされている一方、どこへ行っても信頼されるんですよ。
どこに行くにもビザはいらないし、どこに行っても彼らは嘘をつかないと思われている。
これだけの地盤を作ってくれたのは先人ですよ。
その先人が作ってくれたタスキをきっちりと受け取って、次の世代につないでいかないと行けない。
それを一緒にやっていこうということを訴えたいと思います。
きょうはありがとうございました。
プロフィール
加藤嘉一(かとう よしかず)
1984年生まれ。山梨学院大学附属中学高等学校卒業。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院大学院修士課程修了。現在は、同大学で研究員を務めるほか、フィナンシャル・タイムズ中国版コラムニスト、フェニックステレビコメンテーターとしても活躍している。
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● 加藤嘉一氏
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2011年11月01日15時45分 提供:週プレNEWS
http://news.livedoor.com/article/detail/5987663/
「ぼくの言っていることが日本と中国で違う理由を教えます」
中国で日本一有名なコラムニスト・加藤嘉一氏のアウェーの戦い方とは?
日本と中国では、取材者の常識も「言っていいこと、悪いこと」も全然違う!
今回はその点でぼくが気をつけていることを紹介します。
ぼくは日中両国をまたにかけて言論活動をしていますが、次のようなことをよく言われます。
「あなたは、日本と中国で言っていることが違いますね」
それじゃ真の懸け橋にはなれないと、お叱りを受けたこともあります。
この指摘に対するぼくの見解は大きくふたつです。
ひとつは「じゃあ、あなたがやってみればいい」。
もうひとつは、「言い方を変えなければならない理由がある」です。
自分に非があれば謹んで訂正します。
ただ、原因がぼくにない場合もあります。
例えば、天安門事件について日本で語るのは問題ありませんが、中国の政治体制下では絶対的なタブーなので言及できません。
思うことは言えばいいという意見もあるでしょうが、言ったら次の瞬間、北京から出ていかなければならないリスクが伴う。
ぼくにとって、それは賢い選択ではありません。
ぼくの使命は日中が相互理解を深めるきっかけになることで、そのためには“土俵”に立ち続けることが何より大切だと考えます。
サッカーにおいてホームとアウェーの戦い方が違うように、ぼくも中国というアウェーで戦うときは日本と同じやり方をしないというだけのことです。
自分で言うのもなんですが、それでも日中両国の人たちから、ぼくの言うことは面白く、耳を傾けるべきだと思われているという感触はあります。
それはおそらく、ぼくの発言が常にインデペンデントで、どこかの利益を優先するものではないからでしょう。
求められれば日本や中国の政府の見解も紹介はしますが、最後はあくまでも持論を展開する。
日本のスタンスを強弁するわけでもなく、中国に媚こびへつらうわけでもない。
両国にとっての“共益”を追求できるような意見を述べるだけです。
ところで、日中両国で取材を受ける立場からいうと、ジャーナリズムに関しては、やはり中国よりも日本のほうに秩序を感じます。
取材態勢にも記事内容にも約束事があり、それがきちんと守られている。
ただ、打ち合わせや段取りに多くの時間とエネルギーを割いてしまい、なかなか本題に進めないのが難点ですね。
その点、中国ではテレビやラジオでも打ち合わせは流れを確認する程度で、基本は“出たとこ勝負”。
取材に関しても手段を選ばないというか、プロフェッショナルではありません。
ネット上で書いたものが、いきなり新聞の1面に大きく出たりするのは当たり前。
先日も、日本の政治について顔見知りの記者から電話で問い合わせが来たんですが、そこで話したことが2時間後にそのままラジオで流れていました。
おいおい、聞いてないぞ、と(笑)。
そういうときはもちろん抗議しますが、日本の物差しでは測れない部分があるのは確かです。
また、ぼくは中国で顔が知られているので、一般の中国の人を“市民記者”と呼び、週刊誌の記者に接するような心構えで接しています。
というのも、SNSの普及によって、おかしな行動をとるとすぐ暴かれてしまう可能性があるんです。
中国の都市部はネット社会ですから反響も大きい。
これじゃ、すてきな女性と出会っても口説くことさえできません(笑)。
政治体制からジャーナリズムの状況まで、これだけ違う両国ですから、軸は変えずとも発言を微妙にコントロールするのは必要なんです。
それでもまだ「一字一句変えるな!」というなら、その理由を教えて欲しいです。
■加藤嘉一(かとう・よしかず)
1984年4月28日生まれ、静岡県出身。
高校卒業後、単身で北京大学へ留学。中国国内では年間300本以上の取材を受け、多くの著書を持つコラムニスト。
日本語での完全書き下ろしとしては初の著作となる『われ日本海の橋とならん』(ダイヤモンド社)が発売中
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