2011年11月16日水曜日

100憶円の寄付

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朝鮮日報 記事入力 : 2011/11/16 09:34
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2011/11/16/2011111600733.html

【社説】安哲秀氏の巨額寄付に注がれる政治的視線

 安哲秀(アン・チョルス)ソウル大学融合科学技術大学院長は15日に記者団と会い、自身が創立した企業、安哲秀研究所の保有株の半分(1500億ウォン〈約102億円〉相当)を社会還元する意向を示したことについて
 「ずっと前から考えてきたことを実行に移しただけ」
と語った。
 同氏は前日、社員に宛てた電子メールでも
 「一つ望みがあるとすれば、私の小さな考えが呼び水となり、多くの人々が賛同してくれればよいということだ」
とつづった。

 富を持つ人が先頭に立ち、寄付文化を広げていくことは、安院長の本当の望みに違いない。
 それは、ずっと以前から
 「金を稼ぐこと以上の社会的責任を果たす企業」
を強調してきたことからもうかがえる。
 保有株の半分の社会還元発表は、全世界の資産家に財産の半分の寄付を促している米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、米バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット会長を思い出させる。
 だが、安院長が、寄付だけでなく世界の医療福祉拡充や貧困撲滅など、寄付金を使った具体的な行動にも関心を寄せたゲイツ氏と同じ道を進むようには見えない。

 安院長は、10月26日に実施されたソウル市長選挙で「ハンナラ党への制裁」を訴え、自ら立候補する意向を示したものの、最終的に朴元淳(パク・ウォンスン)現市長の支持に回り、選挙直前には朴氏の選挙事務所も訪れた。
 そうした直接的な政治活動を通じ、朴氏当選の立役者となっただけでなく、次期大統領選挙の有力候補に台頭した。

 安院長は今回の寄付の背景を説明しながら
 「戦争の廃虚と分断の痛みを乗り越え、類を見ない発展を遂げた韓国社会は、最近大きな試練に直面している。
 中産層が瓦解し、特に若者世代が挫折を味わっている。
 その問題の中核は、価値の混乱と資源の偏った配分だ」
と述べた。
 単に寄付文化の広がりだけを念頭に置いたと見るには、韓国社会が抱える重い課題についての言及が多かったといえる。

 「政治的な目的で資産を寄付したとの見方がある」
と述べた記者に対し、安院長は答えることさえしなかった。
 もし政界に飛び込む考えがないのなら、きっぱりと答えただろうが、安院長はそうしなかった。
 政界は、同氏が数年前に経営の一線から退いたとき、あるいは大統領選の後ではなく、
 「安哲秀新党」
への関心が高まってきているデリケートな時期に株式の寄付を発表したこと自体が、大統領選の準備に入ったことを告げるシグナルだと受け止めている。

 統合交渉を進めている野党・民主党と「革新と統合」側は、来年4月の国会議員総選挙前に安院長が統合野党に加わるよう望んでいると表明した。
 だが、安院長のアドバイザーとされる法輪僧侶は
 「私と安院長は時代精神と歴史的使命を全うする政治について思い悩んでいる」
と、あいまいな言葉を繰り返している。
 こうしたことから「安哲秀新党説」がやむことはないものの、その実体については何も明らかになっていない。
 安院長は、自身に政治的視線が注がれるほど、率直で正直な答えを待ちわびる国民の忍耐心が、次第に限界に近づいていくという事実を直視する必要がある。



 100憶円の寄付といえばいの一番に頭に浮かぶのがソフトバンクの孫正義の寄付。
 これは東日本大震災という未曾有の災害に出会っての突然の行動であって、政治的意図はないと思える。
 同じような金額の寄付を申し出たのが韓国の安哲秀。
 だが、上の記事のように素直に善意の寄付とは受け取られていない。
 というのは、韓国は今のところ順調で「韓国の上昇志向が未来を開く」といったウカレムードにある。
 韓国自体は昨年あたりをピークにして、下りに入っている。
 あらゆる面で、経済の急激な成長による歪が出始め、社会全体がアップアップしている。
 「上昇志向の韓国人が未来を切り開く」といった空虚なキャッチフレーズの高揚がなによりも必要になってきている社会である。
 足元みないようにして、視線をはるかな未来に向ける。
 なにしろ、足元は蟻地獄のように滑り落ちている。
 もし、足元を見たら恐怖におののくしかない。
 この歪みをすこしでも糺すために100億円の寄付をすると言う。

 だが、いまのところ表面的には災害も起こっていないし、社会問題もガッチリ蓋をされているし、とりたてて大枚な寄付が必要な時期ではない。
 バブル的なバラ色ムードに酔っているこのとき、特別な理由もなく100憶円を寄付するといえば、誰もが野卑な下心を感じるのは当然のことになる。
 韓国と日本の差を考慮すれば、この100億円は日本なら150億円から200億円にはなるだろう。
 それをあっさりと、寄付しますと言われても、善意と認めるのはちょっとためらいがある。
 孫正義のときですら、目の前に大災害という事実が横たわっているのもかかわらず、ああでもないこうでもないという
 心のネジ曲がったヤツがたくさん
いた。
 平穏時に100億円の寄付とくれば、何かあるのではないか、と勘ぐってもしかたがない。
 いったいこれどう使うのかでひともめきそうである。

 問題はもし安哲秀が大統領選を視野にいれての行動だったとしたときである。
 つまり、彼が大統領選に出るか、あるいは傀儡を立てるかしたらどうなるか。
 以降の韓国の大統領選は「100億円」という金額がベースになってしまう
ということだ。
 言い換えると、100億円用意できないと大統領選挙に出馬できなくなる、といった風潮に流れる可能性がある。
 金権選挙がますますひどくなってくる。
 「いくら用意できました」
と問われ
 「やっと、1億円ほど」
 「じゃ、ダメですね。立候補とりやめですね」
ということにもなりかねない。

 アメリカ大統領選挙は金権選挙のマニュアルみたいなものだ。
 どこにも民主主義選挙の香りがしない。
 いかに、ゼニを集めるか、それが大統領選を左右する。
 そして公然とマスコミ上に「***候補は何億ドル集めた」とか、「***は集金出来なかった」とかが流される社会である。
 ゼニを集めたほうが勝ちという選挙である。
 さらにはその選挙日を「スーパーチューズデイ」という。
 これを持ち上げている連中が日本にも多い。
 基本的には徹底的に批判すべきシステムだろうに。
 例えばあのロシアですら大統領選挙は日曜日にやる。
 なのに肝心要のアメリカは、なんと火曜日にやる。
 
なぜか?
 なぜなら、貧乏人が選挙に参加できないように仕組まれている
からである。
 アメリカには民主主義はない。
 金持ち主義しかない。

 さて、韓国の大統領選挙はどうなるのか。
 100憶円の金権選挙に流れるのか。
 貧乏人は、庶民は立候補できない無言の形が作られていくのか。
 そんなことを考えてみると安哲秀はこのさい、100憶円の寄付と同時に選挙への関わりを潔く切ることだろう。
 でないと、韓国社会にドロを塗ることになる。
 寄付というのは「善意」が前提にあっての寄付である。
 もし含むところがあるならそれは寄付ではなく策略・計略となる。

 

2011年11月18日16時18分 [ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/710/145710.html?servcode=200&sectcode=200

巨額寄付効果大統領選世論調査で安哲秀氏が浮上

 1500億ウォン(約100億円)相当の私財を寄付することにした安哲秀(アン・チョルス)ソウル大融合科学技術大学院長の勢いがさらに強まった。
 次期大統領選に関する世論調査で支持率が‘意味のある’上昇を見せている。

安哲秀院長は通信社ニューシスと世論調査機関モノリサーチが15日に共同で実施した世論調査で、ハンナラ党の朴槿恵(パク・クネ)元代表と一騎打ちになった場合、47.9%の支持を得た。
  朴槿恵元代表は42.0%だった。 安哲秀院長の支持率が朴槿恵元代表より5.9ポイント高い。 先月27日の同じ調査に比べては差がさらに1.3ポイント開いた。

与野党の次期候補を一緒に調査した‘多者対決’でも、安哲秀院長は朴前代表と同じ33.7%でともに1位となった。
  ‘多者対決’ではその間、ほとんどの世論調査では朴元代表が優位だった。
  しかし安哲秀院長の寄付が伝えられた14日以降に実施された世論調査では、朴前代表と肩を並べた。
 「寄付効果」が世論調査にある程度反映されたとみられる。

多者対決構図での安院長の支持率上昇は‘固定支持層’が生じているという意味だ。
 韓国社会世論研究所のパク・ワンギュ代表は16日、
 「2者対決は‘陣営間の対決’という性格を帯びるため、消極的な指示勢力も支持率に含まれるが、多者対決で1位になったというのは、安哲秀院長の固定支持者が増えているという証拠」
と分析した。
  また「朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長に条件なしにソウル市長候補を譲歩した点、私財出捐決定をしたことなどが、これまでの政界に失望した世論を吸収しているとみられる」と話した。

政界では
 「安哲秀エッセー集」が出版される来年初めごろの支持率に注目する必要があるという声が多い。
 安哲秀院長がこれまで出した自叙伝・エッセー集はベストセラーになっている。
 2001年『CEO安哲秀の魂を込めた勝負』、2004年『CEO安哲秀、今私たちに必要なものは』などは半年近くベストセラーとなった。
 安哲秀院長は新しい本で、いかなる形であれ、社会の懸案に言及をするとみられる。
 その場合、安哲秀院長の支持率がもう一度動く可能性がある。


 これに勝つためには150憶円の寄付が必要になったということだろう。
 悪い前例を残すことになった。
 思うにこれで韓国の選挙制度は急激にお金にまみれていくことになるだろう。


 
 
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