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● 浙江省温州市
ヨーロッパに続き中国も危険な状態に入ってきた。
地方の末端からバブルがはじけてはじめ、じわじわと中心部に迫っていく。
過去に日本でもあったことである。
予てから言われていたことだが、来るべきものがきた、ということでもある。
ドミノ倒しのように広がっていく可能性が高い。
『
サーチナニュース 2011/10/12(水) 13:01
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=1012&f=national_1012_114.shtml
温州市経済が壊滅の危機、4割近くの企業が年内倒産も
浙江省温州市で発生している金融危機で、現在、市は省や国に対して救済策を求めているが、もしこれが得られない場合、同市企業の4割近くが年内にも生産停止・倒産する可能性があるという。
中国メディアが報じた。
中小企業の社長が相次いで失踪したことで注目された今回の地方的な金融危機は現在、より深刻な状態に陥っている。
民間貸出の資金ショートが続発し、連鎖的に中小オーナーが失踪、自殺者まで出た。一部公務員が職権含めて得たグレーな資金が流れ込み、民間貸出規模が拡大したのも被害を大きくしたと考えられている。
また、もともとの
主力産業である製造・輸出業が、人民元高や賃金上昇などで低迷、
産業が空洞化し、
実業よりは手軽に儲けられる不動産など投機方面に多くの資金が流れたことも事態を複雑にしている。
資金ショートが相次ぎ、同市ではすでに2割前後の企業が生産停止、半停止の状態との情報もある。
もしすべての企業が順調に生産活動を行ったとしても、コスト上昇が激しい昨今、同市製造業の利益率はわずかに3%程度であって、これらを合算しても、同市企業の借り入れ総額に対して、利息さえ返済できない計算になるという。
「連鎖反応が起き、社長が夜逃げし、自殺者が出るのはある意味当然」(現地関係者)
だという。
』
『
中国証券報 2011/10/12(水) 11:49:27更新
http://searchina.ne.jp/bz/cs/disp.cgi?y=2011&d=1012&f=business_1012_127.shtml
マネー・ゲームに消えた温州の巨額資金、トラブルや事件相次ぐ―中国
浙江省温州市の民間貸出が危機に陥り注目を集める中で、今まで高利貸しにつぎ込まれた資金がどこに消えてしまったのか話題になっている。
莫大な資金の大半が不動産や金のマネーゲームに費やされ、温州を没落させたとの声もある。
11日付で伝えた。
信用保証会社の関係者によれば、一般的な信用保証会社は個人や企業から月利2%で資金を調達し、中小企業などに4-8%で貸し出していた。
しかし最近は貸出利率が8-10%にまで高騰しており、返済できずに夜逃げする企業経営者が続出。
担保会社も資金が回収できずに連鎖倒産するため、多額の損失を被る市民が後を絶たない。
同市の内部告発サイト「703網」の掲示板には、大金を失ったショックの声があふれている。
加工工場を経営していたある男性は、
「会社の利益が減ってきたため、友人に誘われて2007年に300万元を元手に貸出を始めた。
利子でどんどん儲かり、2年後には4000万元になった」
と明かす。
しかし09年4月に2億元を貸し付けていた不動産開発業者が蒸発し、結局1500万元を失ったという。
友人に借りた金を民間貸出に預けて差益を稼いだり、自宅を担保に借りた金を個人的に貸出していた人がトラブルに遭う例も多い。
温州金融弁の張震宇主任は、
「銀行が貸付金の用途を管理できず、一部の資金は本来の目的とは違う貸出市場に流れたのではないか」
との見方を示す。
さらに債務に追われた企業が大量に倒産したことで、商業銀行の安全性にも影響が及ぶと警告する。
同市中級人民法院の統計によれば、8月末までの民間貸出に関する訴訟件数は前年同期比25.73%増、被害金額は同71%増と悪化の一途をたどっており、被害金額の合計は50億元を超える。
このうち8月の被害金額は10.7億元で、1月の2.69倍に達している。
また同市公安部は、民間貸出に関連するヤミ組織の「地下銀行」の調査を強化しており、今年1-8月だけで違法な資金集め行為を17件摘発した。
金額は同30.77%増の5.5億元で、貸出に起因する犯罪は同16.39%増の71件に上る。
』
『
サーチナニュース 2011/10/07(金) 17:17
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=1007&f=national_1007_279.shtml
浙江省温州市の金融危機 公務員の個人マネーの横行が遠因か
最近、中国浙江省温州市の民間貸出が「異常な状態」になったという報道が盛んにされている。
2011年だけでも何十社の社長が夜逃げ、あるいは自殺をした。
9月27日午後、温州正得利靴業有限公司社長である瀋氏は恩州市区域内の順綿マンションの22階から飛び降り自殺をした。瀋
氏は自分の命で頻繁に起きる民間貸出の資金ショート事件の深刻さを世間に晒(さら)した。
9月21日、温州の主導的企業である順吉グループ社長の施暁潔氏は高利率で集めた約13億元という大きな資金をもって家族と一緒に姿をくらました。
数日後、警察に捕まったが、その債権者の8割が公務員であった。(9月29日付けの「南方日報」による)
その他、企業は債権者へ対する高利息借入金の返済ができなくなり、融資の担保会社の社長も夜逃げし始めた。
担保会社の資金は民間から集めた資金である。
資金調達の流れは、一般の家庭はお金を仲介人に預けて、また仲介人が担保会社に預けるというビラミット式の構造になっている。
担保会社の社長が逃げると数多くの家庭のお金が水泡になってしまうのは当然である。
こうした温州における“金融危機”は中国中央政府でも注目されている。
温州での高利貸の事件の頻発に伴って、「官銀」が介入したことが明らかになってきた。
「官銀」というのは長江デルタ地域で流行(はや)っている政府官吏の資金に対する別称である。
不法資金調達事件と資金調達詐欺事件の調査で、政府官吏の大量の資金が高利貸に流れ込んだことがわかった
実際、「官銀」が高利貸に加わったのは温州だけではない。
政府官吏の個人資金が民間の高利貸に流れ込む現象は温州では「普遍的な現象」である。
ある意味では、「官銀」が温州の民間貸出の陰の後ろ盾になっている。
公務員は権力と職務の都合を利用して資金融通と高利貸に参与した。
公務員は地位と信用を元にしてより多くの民間資金を集めることができるのは当たり前である。
温州地域のある公務員は民間資金調達の仲介人の役割を何の躊躇(ためらい)もなく果たした。
報道によると、2011年初、温州市龍湾公安局はある非法資金調達事件の債権者は全部司法機関の役人であることが分かったという。
被害者の金額は2000万元、1500万元、2075万元、3500万元から8000万元などである。
人民銀行温州中心支行が最近公布した「温州民間貸出市場に関する報告」から温州の民間貸出の盛況ぶりをうかがわせる。
89%の家庭と個人、59.67%の企業が民間貸出に参与しているし、目前の温州民間貸出規模は1100億元になるという。
著名な経済学者である韓志国氏はブログで、
公務員が企業の債権者になったのは新しい「中国の奇跡」である
とも言えると書いた。
債権者の職務の階級は末端公務員から高い地位までいろいろである。
事件が起こると、おおっぴらには言えないが、どうしても自分の元金を手に入れようとしている。
13億元という詐欺事件の後ろ盾になっている公務員の資金規模に対しては「一目を置く」べきである。
中国の公務員は人民に奉仕する公務員ではなく、「人民幣」に奉仕する公務員になってしまった。
夜逃げ事件や自殺事件が頻繁に起き、高利貸の陰にある権力と金銭の取引が明らかになり、深刻な社会の問題が反映される。
多くの学者と企業は民間貸出の公開化と法制化は問題解決の鍵であると見ている。
民間貸出の問題からも中国の中小企業の生存の難しさが垣間見える。
見逃がせないのは、多くの企業が民間貸出から融資を受ける理由は銀行貸出を返済するためである。
銀行貸出を返済した後、銀行からの再度資金繰りに苦しんでいる企業は、最終的には資金ショートに陥る。
銀行の中小企業への資金繰りの強化は中小企業の資金リスクの緩和につながっている。
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サーチナニュース 2011/09/22(木) 09:35
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0922&f=national_0922_062.shtml
中国の地方債務8割が返済不可能か―2012年に危機?
地方政府の債務問題が2011年から2012年にかけて表面化しそうだ。
2010年末で全国の地方政府性債務残高は10兆7200万元で、うち43%の4兆6000万元が今年と来年の中ごろまでに返済期限で迎えている。
2013年までに返済期限がくるのは債務総額の60%で、これから返済ピークを迎えるという。
(注:1元=12円:10兆7200万元=152兆円)
2011年初めから中央政府は、かなり強力な不動産市場抑制政策をとり、8月から全国的に不動産価格上昇に歯止めがかかり、土地使用権入札の不成立が急増。
土地使用権の切り売りを主たる財政収入源にしている一部地方政府は非常に危機的状況に直面している、と言われている。
会計審査署が6月末に発表した2010年末現在の統計では、全国の地方政府の債務残高は10兆7200万元(同年のGDPの26.9%)で、その60%が2013年までに返済しなければならず、43%の返済が2011年と2012年に集中している。
債務状況を公表している14省・市・自治区政府の中で債務残高が大きいのは新疆ウイグル自治区、海南省、寧夏回族自治区という。
チャータード銀行中国研究部主管・王志浩氏は台湾紙「旺報」に対して、地方政府の債務の70―80%について、「利息まで返済するのは不可能」と、かなり深刻な見方を示した。
対応策としては、中央政府と開発銀行が共同で開発債券を発行する あるいは新たな政府機関をつくり、その資金で、地方政府の失敗したプロジェクトの不良債権を買い取り整理する基金を設立すべきだ、とした。
財政部が備蓄している1兆元の資金をこの基金のために供出し、2011―2015年のGDPの1%にあたる予算および、全国の土地譲渡収入の20%を資金にあてれば、これが可能だという。
一方、先日、大連で行われた夏季ダボス・フォーラムでも、このテーマは議論の的となったが、一部の国内商業銀行は地方の債務リスクはコントロール可能との見方を示している。
招商銀行の馬蔚華総裁は
「中国の地方政府の返済能力は絶えず向上しており、ギリシャなどの状況とは根本的に違う。
上場銀行の年報をみても、銀行の資産状況は良好で、地方融資プラットフォームの不良債権率も、全体の不良債権率よりも低い」
として、中国としては今回の危機を乗り越えられるとの自信を見せた。
中国では2008年のリーマンショック対策として4兆元の財政出動を決めたが、そのうちの多くは地方政府の財政から供出された。
この資金を調達するため、地方では非合理的なプロジェクトと融資が乱発されたと言われている。
特に地方融資プラットフォームという形の地方政府が創設する投資会社が都市再開発プロジェクトのために融資を得る方式では、土地を担保に際限なく融資が受けられ、いわゆる隠れ債務となり、深刻度がましているという。
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サーチナニュース 2011/09/13(火) 10:40
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0913&f=business_0913_073.shtml
地方政府債務―「土地バブル」頼み、政権交代で混乱も
中国の地方政府債務の返済とその能力に対する危惧が国内外で高まっている。
およそ10兆元(約120兆円)と言われる地方政府債務は、実態把握が難しいと言われるほど複雑であるのに加えて、地方政府そのものが直面する課題も表面化してきている。
国営通信社・中国新聞社では論説を掲載している。
まず、中国の地方政府はそのほとんどが土地にその財政を依存している。
地価の高騰に伴う各種のやりくりが地方政府の財源になっているのが実情だ。
一方で、中国では大都市ばかりではなく、全国的に住宅価格の高騰と、その対応が急ピッチで進められている。
バブル崩壊の恐怖は隣国の日本をよく研究している中国当局にとって切実な問題。
一方、地方政府にとって実は「適度なバブル」のほうが自身の財政にも都合がよかったし、債務の返済を考えるのであれば、現在、必須の条件になっているとも言えるという。
また、多くの地方政府債務は元利返済のピークが2012―2013年に迎えるとされている。
ちょうどこの時期、中国は胡錦濤政権から新たな政権に変わる。
10年スパンの政権交代時にちょうど合致するわけだ。
中央の政権交代は当然、各地方政府にも多かれ少なかれ影響を与え、多くの地方政府内では人事の大幅入れ替えなど、混乱が起こることになる。
この混乱に乗じて、意図的なものも含めた「地方政府の債務返済放棄」が多発する可能性がある、とも指摘されている。
欧米の債務問題や、長期債務が国内総生産(GDP)比150%を超えるとされる日本と比べれば、
中国の地方政府債務10兆元というのは中国GDP比20%程度であるため、「安全圏ではある」(現地業界関係者)。
しかし、元利返済のピークを間近に控えていること、
実質的な返済めどは立てられていないことなどは従来指摘されている。
さらにここにきて、土地に極度に依存した地方政府の財政体質と、国全体としてはバブルを抑えたい、そうした施策が次々と発表されているにもかかわらず、地方政府は引き続き「適度なバブル」に頼らなければならないジレンマ、政権交代で予想される混乱、などという不確定な要因も出てきている。
すべてが焦げ付くとは考えづらいが、
一部の地方政府で債務不履行(デフォルト)が発生する可能性は否定できない。
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JB Press (2011年10月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/26342
下り坂に入った「世界の工場」中国経済
奇跡をもたらした成長モデルもついに限界
中国東部に位置する浙江省の温州市はライターとメガネの世界最大の生産地であり、以前から中国経済全体の趨勢を決める都市の1つと目されている。
そのため、この街でここ数週間、従業員に給料を払わず多額の負債を残して失踪する工場経営者が続出しているという報道は、この国の経済にとって不吉な話だという指摘が出ている。
中国の安価な輸出品に対する世界の需要の鈍化、生産コストの上昇、そして持続不能な水準に達した債務という悪条件が重なり、中国でも有数の抜け目のなさを誇る起業家をも破綻させる事例が生じている。
■相次ぐ破綻と経営者の失踪
温州市では3週間前、4億元(6300万ドル)を超える負債を抱えた靴工場のオーナーが自殺を図るという悲劇的なケースもあった。
国営メディアによれば、このほかにも90人を超える経営者が姿を消してしまったという。
世界最大の輸出国である中国の貿易の変動は、世界経済の健康状態を測る指標と見なされることが多い。
そのため、弱気な見通しを立てている投資家の中には、温州の問題は中国経済のハードランディング(硬着陸)が差し迫っていることの表れだという見方もある。
先進国の大半が景気後退に再突入する可能性に直面している時期だけに、これは世界経済にとっても恐ろしい予測である。
実際のところ、温州市の問題が中国経済全体の劇的なクラッシュ(墜落)にすぐにつながる公算は小さい。中国経済は今後、緩やかに減速するにとどまるだろうというのが大半のアナリストの見立てだ。
■温州に見る重大な転換点
しかし、温州の出来事は、中国が重大な転換点に差し掛かったことを示している。
「温州で起こっていることは、現在の中国のモデルが終わりを迎えつつあることの反映だ」。
投資銀行バークレイズ・キャピタルのホアン・イーピン氏は、この国の輸出主導・投資主導の経済成長パラダイムについてこう語る。
「中国の過去30年間の経済的成功は、安価な資本と安価な労働力、安価なエネルギー、そして安価な土地を土台にして達成された。
ところが今では、この成功によって生じた巨大な不均衡と非効率さが次から次へと問題を起こすようになっている」
■世界に影響を及ぼす変化
世界最大の人口を擁するこの国は過去30年間で年率平均10%の高成長を遂げ、貧困にあえいでいた何億人もの人々の生活水準を引き上げてきた。
そのモデルが変わるとなれば、その影響を受けるのは中国国民だけにとどまらない。
まず、安価な中国製品を使うことにすっかり慣れている欧米の企業や消費者たちに影響を及ぼす構造変化の前ぶれになる。
また、息切れの兆しも見える投資・建設ブームを背景とした中国の原材料需要にますます依存している先進国および新興国の輸出業者にも打撃をもたらすことだろう。
中国経済の奇跡が始まったのは1978年、中国共産党が市場志向の改革開放路線を打ち出した時だった。
共産党は農家に限定的な財産権を与え、作物を国家からの割り当て以上に生産できた場合にはその超過分を自由に販売してもよいことにした。
これを受けて農業の生産性は急上昇し、農村部の所得も増加した。
そして、これに続いて、農村部から都市部への大規模移住、工業化、および後に世界の工場としてその名をとどろかすことになった製造業への投資を促す諸改革が実行された。
世界銀行のデータによれば、1990年には中国の1人当たり国民所得はサハラ以南のアフリカ諸国の平均値を30%下回っていた。
ところが今では4000ドルを超えており、サハラ以南のアフリカ諸国の3倍に達している。
世界中の投資家や買い付け担当者を魅了した、誰にも太刀打ちできない「中国価格」は、安い賃金で柔軟に働いてくれる労働者の絶え間ない供給、タダ同然の土地、国有銀行から容易に低利で借りられる資金、電力や水といった生産要素の大幅な価格抑制などに支えられていた。
ところが、人類のほぼ5分の1に相当する人々の生活水準を劇的に上昇させたこのやり方は、もう通用しないと見なされるようになってきた。
そのうえ、環境破壊や社会の格差の急拡大といった深刻な問題を助長しているとの指摘も出ている。
■急成長の原動力に衰え
「中国を急成長させてきた原動力が衰えつつある」。
世界銀行のロバート・ゼーリック総裁はこう語る。
「資源の大部分は農業から工業にシフトした。
労働人口の減少と人口の高齢化が進むにつれ、退職者を支える労働者の数は少なくなっている。
それに、生産性向上のペースも低下傾向にある」
世界トップクラスのインフラを擁し、国内外でサプライチェーン(供給網)を構築している中国は、まだしばらくの間、世界の製造業の拠点であり続けるだろう。
しかし、最低賃金は多くの地域で年率20%を上回るペースで上昇している。
使える土地も次第に少なくなり、その利用コストも高くなっている。
また、政府は低利の貸し付けを減らしつつあり、エネルギー価格やその他の公共料金も自由化する方向に動いている。
■利益を圧迫され嘆く企業、人口構造も重しに
その一方で、これまで工場や道路、空港、住宅などの新設に向けられ、経済成長のメインエンジンとなってきた大量の投資も、いつまでも続くものではないという雰囲気が次第に強まっている。
温州市の新華包装という企業の幹部を務めるシュ・チュワン氏は、厳しい時代になったと話している。
同社はプラスチックボトルやファスナーなどの製造を手がけているが、コストの上昇と、つい2年前なら高いと見なされた賃金で働きたいという労働者の不足に悩まされているという。
「利益は以前よりもずいぶん減っている。
生産要素の価格上昇は本当に深刻で、最近では黒字を出している企業がちょっと見つけにくくなっている」
シュ氏の苦境は人口構造のせいでもある。
専門家の多くは、中国の生産年齢人口は既にピークを過ぎており、今後は減少していくと考えている。
30年来の一人っ子政策もこの傾向に拍車をかけるという。
またこの苦境は、これまでの急激な経済発展の対価でもある。
つまり、高成長を背景にほぼすべての価格が上昇したことや、薄給であっても工場や建設現場でせっせと働く貧しい労働者の数が減ったことの反映でもあるのだ。
■危機以前よりも大きくなった中国経済の歪み
中国の指導者層は、この国の経済に形成された歪みの大きさを十分承知している。
これまでの発展に大いに貢献してきたモデルの時代が終わりつつあることも、率直に認めている。
「中国は今、その発展において不均衡、不調和、そして持続不可能性という深刻な問題に悩まされている」。
胡錦涛国家主席は最近の演説でこう語り、
「我々は経済構造の戦略的調整、科学技術の進歩と革新、そして資源節約型で環境に優しい社会の構築を加速しなければならない」
と述べた。
最新の5カ年計画(2011~2015年)には、国内消費を増加させる一方で輸出や設備投資(特に後者)への依存度を低下させるという公約が数多く盛り込まれている。
しかし、これらはもう10年以上前から唱えられてきたことであり、実際には正反対の状況が生じている。
例えば、中国の国内総生産(GDP)に占める消費の割合は1990年代後半には約45%だったが、昨年は33%という異様に低い値にとどまった。
逆に、GDPに占める投資の割合は50%という世界最高の水準に達している。
■GDPの半分を投じてやっと10%成長
「改革開放路線が始まった30年前、GDPに占める投資の割合は25%前後で、経済は年率10%程度のペースで成長していた。
ところが今では、GDPの半分を投資に回して同じ成長率を達成している。
これは資本効率に何らかの問題があることを示唆するものだ」
とバークレイズのホアン氏は指摘する。
2008年に欧米で世界金融危機が始まった時には、この古いモデルからの不本意な転換もあり得るように思われた。
中国製品に対する世界の需要が激減し、2009年3月までの1年間における中国の輸出は3分の1以上落ち込んだからだ。
何万という数の工場が閉鎖され、温州などの都市からは2300万人を超える出稼ぎ労働者があふれ出した。
これを受けて中国政府は景気刺激策を打ち出した。
一部のエコノミストに言わせれば、これは輸出業者への打撃を弱めることを目指した史上最大の金融・財政緩和策だった。
国営銀行は市中への大量の資金供給を命じられ、地方政府は成長を加速させる投資の増額を要請した。
その結果、借入金によって行われる投資が急増し、特に住宅建設の投資が増加した。
建設途中の高層住宅や競技場、会議場が国内のあちこちの都市で見受けられるのはそのためである。
世界の他の国々には、この景気刺激策は紛れもない成功に見えた。
GDP成長率は2ケタに戻り、天然資源を中心とする中国の輸入需要も増加したからだ。
しかし債務と投資に依存したこの政策は、中国政府が既に気づいていた成長モデルの歪みをすべて増幅させ、深刻な不動産バブル発生の危険性も生じさせた。
■天然資源などを食べ過ぎて「肥満体」に
アナリストの大半は、今や世界第2位の規模を誇る中国経済は危機の前よりも不健全になっており、不均衡の度合いも高まっていると見ている。
投資(特に不動産投資とインフラ投資)への依存度も高まっていると考えている。
「天然資源などを食べ過ぎて肥満体になったようなものだ」。
米ワシントンに本部を構えるシンクタンク、ヘリテージ財団のデレク・シザーズ氏は中国経済の現状をそう表現してみせた。
中国の経済モデルは終わりを迎えつつあるのかもしれないが、大半のエコノミストは、中国経済は成長率が徐々に下がるソフトランディング(軟着陸)に向かっていると考えている。
確かに、18日発表の第3四半期GDP伸び率は、年率9%台を維持すると見られていた。
また、仮に深刻な不況に襲われても、中国政府は景気を短期的に回復させるために金融を緩和したり、過熱した不動産市場の冷却や以前の景気刺激策で増えた貸し出しの抑制のために講じた政策を逆回転させたりできるだろう。
しかし、GDPの増加に伴ってインフレが続いた過去10年間のような好景気の再来は考えにくい。
恐らくGDP伸び率は8%以下にとどまり、物価はじりじり上昇し続けるだろう。
HSBCによれば、中国の2011~15年の消費者物価上昇率は年平均で5%に達し、2001~2010年の同2%を上回る見通しだという。
また、今では中国が非常に多くの工業製品の主要な生産地になっているため、中国のインフレが長期化すれば世界中の消費者物価が上昇することになるだろう。
■改革実行は待ったなし
中国政府は打つべき対策を認識している。
既に社会福祉サービスの改善、補助金付き住宅の建設、最低賃金の引き上げ奨励などに取り組んでいる。
しかし多くのアナリストは、消費の割合を高めるバランス調整を急ぐために、もっと大々的な施策を講じなければならないと考えている。
「中国が抜本的な政治・経済改革を実行に移せる時間は限られている」。
UBSインベストメント・バンクのジョージ・マグナス氏はこう語る。
「この改革がすぐに、それも本格的に着手されなければ、中国経済は信用供与と投資の急減に見舞われ、経済成長率が大幅に低下することになるだろう。
中国ではデモや暴動が大幅に増加し、その激しさも増し、かつ広がりを見せているだけに、これは特に慎重な対処が必要な問題になる」
By Jamil Anderlini
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